ラダックといえば「ジュレー!」ですね。
「おはよう」、「こんにちは」、「こんばんは」、「さようなら」、「おやすみなさい」、「ありがとう」と、ラダックではあらゆる場面で用いられる万能挨拶です。ラダックのみならず、お隣りラーホール、スピティでも、ラダックほどではありませんがよく耳にします。
しかし、そのもともとの意味は何か? なぜ万能挨拶として用いられるのか? については謎となっています。どうしてでしょうね?
チベット語・ラダック語に関する本・論文を調べても答えは出てこないし、では現地では? と訊いてみても、ラダッキですら「さあ?」と言うばかりです。困ったもんだ。
しかし、これだけポピュラーな言い回しがいつまでも「意味不明」というのは落ち着きが悪い。
というわけで、「ジュレー」語源探索の始まり。
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あっと、先に言っておきますが、今回はちゃんと結論までたどり着きますからご安心を。
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まずチベット文字でのつづりを調べてみましょう。
出典は、毎度おなじみの
・Rebecca Norman (1994) GETTING STARTED IN LADAKHI. pp.(12)+118. Melong Publications, Leh.
・Abdul Hamid (1998) LADAKHI - ENGLISH - URDU DICTIONARY. pp.xxxix+406. Melong Publications, Leh.
です。
そこでの表記は
འཇུ་/འཇུ་ལེ་ ju/ju-le
となっています。
また、
・Sanyukta Koshal、土屋守・訳(1982) 『あむかす・旅のメモシリーズ no.572 ラダック人が作ったはじめてのラダック語会話テキスト』. pp.121. あむかす事務局, 東京.
では、
ཇུ་ལེ་ ju-le
となっていますが、大差ありません。
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しかし、本当にこの綴りが正しいのでしょうか?
ラダック語(チベット語ラダック方言)というのは口語であって、文字で書きとめられるようになったのは、かなり新しい時代のことです。19世紀に欧米人が入域し、言語研究者が書きとめるようになりましたが、体系的にチベット文字で記録されるようになったのは20世紀後半でしょう。
ラダック語とチベット語は、発音が大幅に違うとはいえ、ラダック語語彙の大半はチベット語そのままですから、ラダック語の文章をチベット文字で表記することはさほど難しくありません。
しかし、この「ju-le」のように、もともとの意味がわからなくなっている単語・文章では、発音されている音をそのままチベット文字で表記するしかありません。
「ju-le」も、本来は別のチベット文字表記である可能性は大でしょう。
以下次回。
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(追記)@2014/03/18
ついに大物に手をつけてしまいました。これは今まで誰も解明していない案件ですから、面白い内容になっているはずです。
この後、小ネタをはさみつつ「語源シリーズ」が5つ続きます。
(1)「ジュレー」の語源
(2)「チャダル」の語源
(3)「ブルシャ」の語源 Revisited
(4)「イエティ」の語源
(5)「ブロクパ」の語源
もう全部書き終わっているので、どんどん出していきましょう。ネタが切れたらまた休めばいいし。
不思議なことに、このblogへは外国からのアクセスが約3分の1を占めています。英文でも提供できればいいのですが、なかなか力がなくてそこまで手が回りません。ごめんなさい>外国の人。
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