2019年6月30日日曜日

東豊書店より最後の発掘品 (1) 『西夏研究論集』/『往五天竺國傳箋釋』

あれから2度行きました。店内に10人近くいるとさすがに身動き取れない。各所で雪崩も。

奥様も総出で客の応対。簡さんもかなりお疲れ。

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天井まで積まれた本の山は、みっちりつめ込まれているので、通常は店主に頼まないと抜くことができない。さすがにそれも、売れたり、下に降ろしたりで、一部は背が低くなっている。それで何冊かは山から抜くことができた。

私の目当ては、その本の山のさらに裏に潜んでいる1980年代の本なのだが、さすがに前の山がはけるところまでは行かず、チェックすることができずに終わりそうだ。残念。

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東豊書店にお世話になった話は、前のエントリーで書いているので省略するが、本当にお疲れ様でした。

あとはあの本の行方の算段がつくことを祈るばかり。

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今回の収穫を紹介していこう。

・李范文 (1983.10) 『西夏研究論集』. 3+363pp. 寧夏人民出版社, 銀川.



前回の続きで西夏ものですが、この本では、西夏本体よりも、その前後、つまり先祖と後裔について紙面を多く割いているのが特徴。

全体の4分の1を占める「西夏遺民調査記」は、1980年に甘粛、四川に、西夏滅亡後に故地に帰った(と考えている)タングート(党項)の後裔=ミニャク མི་ཉག mi nyagを訪ねた調査記。

見出しだけ記しておこう。

一. 弭葯(ミニャク)/二. 迭部(テウォ)/三. 白馬人(ベマ)/四. 瀘定(ルーディン)/五. 康定(ダルツェンド)/六. 明正土司(チャクラ・ギャルポ)/七. 西呉王(セウ・ギャルポ)/八. 木雅甲布(ミニャク・ギャルポ)/九. 木雅五学者(ミニャクの五人の学者)/十. 托托甲布/十一. 長征遺民/十二. 六巴(ルクパ)/十三. 沙徳(サデ)/十四. 木雅(ミニャク)/十五. 道孚(タウ)/十六. 丹巴(タンパ)/十七. 阿壩(ンガワ)/十八. 羌族/十九. 碉考/二十. 附記

まだ途中までしか読んでいないが、すごくおもしろい。

古くて安い本で、こういうのがたくさんほしいのだ。

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・〔唐〕慧超・原著, 張毅・箋釋 (1994.11) 『往五天竺國傳箋釋』(中外交通史籍叢刊). 11+178+一八pp. 中華書局, 北京.



新羅出身の僧・慧超(704-87)が、インド求法(723-27)の後に記した中央アジア~インド地理誌が『往五天竺国伝』。しかしこれは早くに散逸し、長らく逸文が知られるのみであった。

ところが、1908年にPaul Pelliot(1878-1945)が、敦煌莫高窟・蔵経洞でその写しを発見した。

本書は、その解釈をまとめたもの。

日本でも、

・藤田剣峯(豊八) (1931.6) 『慧超往五天竺國傳箋釋』. 92pp. 北平.
・桑山正進・編 (1992.3) 『慧超往五天竺國傳研究』(京都大學人文科學研究所研究報告). xii+292pp.+pls. 京都大学人文科学研究所, 京都.
・桑山正進・編 (1998.1) 『慧超往五天竺國傳研究 改訂第二刷』. xii+292pp.+pls. 臨川書店, 京都.

があり、必要箇所はコピーで持っているのだが、中国の研究者の意見も見ておきたい、と思ったわけ。

中国、韓国からは、『往五天竺国伝』解釈本が他にもいくつか出ているようなので、機会があれば見てみたい。

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買ってきた本はどれも面白いので、紹介も手間がかかる。しばらくこれを続けよう。

2019年6月15日土曜日

東豊書店に関する文献集

と言っても、ほとんどない(笑)。

唯一まともなのが、先日発表されたばかりの

・川上哲生 (2019.5) 光陰似箭 東豊書店の閉店を惜しむ. 中国研究月報, vol.73, no.5, pp.46-47.

これは、古勝隆一先生のTwitterと東方書店のTwitter

・Twitter > 古勝隆一 @KogachiRyuichi > 2019年6月3日
https://twitter.com/KogachiRyuichi
・Twitter > 東方書店 東京店(神田神保町) @toho_jimbocho > 2019年6月12日
https://twitter.com/toho_jimbocho

で知りました。

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これで、店主の簡木桂さんが1929年台湾生まれ(2019年現在90歳)であること、1955年来日、そして1964年に代々木会館に東豊書店を開店した(2019年で55周年)ことなどがわかった。

代々木会館の由来なども簡単に記されており、わずか2ページながらとても中身が濃いエッセイ。

これは、この100倍位に膨らませられるな。簡さんの伝記希望。日台関係現代史料としても一級品になるはずだ。

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他には、web上の訪問記くらいしかない。10年位前にはもっとあったような気がするが、個人websiteはどんどんなくなっているし、大手portal siteのblogサービスも提供をやめているので、今後もどんどん消えていくと思われる。

それに輪をかけて、最近Google検索は、10年以上更新されていないpageはsearchをやめている。つまり古いpageはGoogle検索でもヒットしなくなっているのだ。

Googleができた時から使っていて、当時その優秀さに驚愕した自分が、こんなことを言う日が来るとは思わなかったが、

GOOGLE使えない!

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一応拾えたものだけ挙げておくが、最近のものしか残っていない。もっとおもしろいのもあったはずだが・・・。

・鍼灸らせん堂 > BLOG > 東豊書店が閉店ということで(2019年6月6日)
http://rasendou.com/?p=1093

・藤本玄珠堂 > 山本匡宏/良導絡研修会(新風先生臨床講演)おまけ(東豊書店)(投稿日:2019.05.30)
http://www.genshudo.com/%E5%A4%96%E9%83%A8%E8%AC%9B%E6%BC%94/%E8%89%AF%E5%B0%8E%E7%B5%A1%E7%A0%94%E4%BF%AE%E4%BC%9A%EF%BC%88%E6%96%B0%E9%A2%A8%E5%85%88%E7%94%9F%E8%87%A8%E5%BA%8A%E8%AC%9B%E6%BC%94%EF%BC%89%E3%81%8A%E3%81%BE%E3%81%91%EF%BC%88%E6%9D%B1%E8%B1%8A.html

・orubhatra/stod phyogs > 2019年5月28日火曜日 代々木の魔窟 東豊書店 2019年6月末で閉業
https://stod-phyogs.blogspot.com/2019/05/20196.html

・Buzz Feed News > News > 吉岡慧/東豊書店が6月末で閉店。大量の在庫はどうなる?(2019/05/22 11:13)
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/toho-syoten

・TimeOut > TOKYO > ニュース > Miroku Hina/掘るほどに宝の山……? あの東豊書店が閉店半額セールを開催中(2019年5月20日、午後 8時 37分)
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/%E6%8E%98%E3%82%8B%E3%81%BB%E3%81%A9%E3%81%AB%E5%AE%9D%E3%81%AE%E5%B1%B1%E2%80%A6%E2%80%A6%EF%BC%9F-%E3%81%82%E3%81%AE%E6%9D%B1%E8%B1%8A%E6%9B%B8%E5%BA%97%E3%81%8C-%E9%96%89%E5%BA%97%E5%8D%8A%E9%A1%8D%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%92%E9%96%8B%E5%82%AC%E4%B8%AD-052019

・大久保占い研究室 > 室長・田中/代々木会館の建て替えで東豊書店が閉店セール中(初出:2019/5/18、改訂:2019/5/20)
https://www.senjutsu.jp/archives/2019/6331

・雨宮零/雨宮零の想星帖 > 東豊書店 2018年05月22日
http://souseido.blog.jp/archives/9479482.html

・orubhatra/stod phyogs > 2017年12月2日土曜日 代々木の魔窟 東豊書店まだ健在・・・だが・・・
https://stod-phyogs.blogspot.com/2017/12/blog-post.html

・ROCKET NEWS 24 > 佐藤英典/“東京の九龍城” に潜入! 廃墟同然のヤバイ建物「代々木会館」にある書店に懐かしの漫画を探しに行ってみた(2017年3月14日)
https://rocketnews24.com/2017/03/14/872577/

・orubhatra/stod phyogs > 2016年9月21日水曜日 代々木の魔窟 東豊書店 続報
https://stod-phyogs.blogspot.com/2016/09/blog-post_21.html

・orubhatra/stod phyogs > 2016年6月7日火曜日 代々木の魔窟 東豊書店 健在なり!
https://stod-phyogs.blogspot.com/2016/06/blog-post_7.html

・大久保占い研究室 > 室長・田中/魔境・代々木九龍城の東豊書店で占いの本を買う(初出:2016/6/1、改訂:2016/11/30)
https://www.senjutsu.jp/archives/2016/2850

・tokusan42/古本屋ツアー・イン・ジャパン > 2015年10月27日 10/27東京・代々木 東豊書店
http://furuhonya-tour.seesaa.net/article/428591732.html

・石野良和のブログ (日々是更新) > 今月の記事 > 2015年1月
http://blog.livedoor.jp/mizuho1582/archives/2015-01.html
(追加@2019/06/15)

・鍼灸 指圧 ほかほか堂のブログ > 東豊書店 2013-10-05 08:00:54
https://ameblo.jp/harikyushiatu-hokahoka/entry-11628420941.html
(追加@2019/06/16)

・道草あつめ > 続・任継愈について(2010-02-13 00:40:20)
https://blog.goo.ne.jp/pingzebu/e/85cd90f81e2d4fc7cd31638856b788df

・ムック、ムッカー、ムッケスト > 東豊書店:代々木の魔窟(2006-01-28 23:30:38)
https://blog.goo.ne.jp/sumeshi_gigoku/e/3892e7595aa8fa4ae04d1b0e0ab2b46e

・5ちゃんねる(旧2ちゃんねる) > 過去ログ倉庫 > 歴史関係の書店を批評するスッドレ(2005/04/24-2007/09/09)
https://academy6.5ch.net/test/read.cgi/whis/1114268696/
(追加@2019/06/15) → 東豊書店に関する書き込みは、ほとんどが自分のだった・・・

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さて、閉店まであと半月、そろそろもう1回行っておきたい。