需要があるようなので、Chamba(चम्बा)県Bharmaur(भरमौर)にあるChaurasi(चौरासी)寺院群の一角に祀られているGanesh(गणेश)像を。
巻いた鼻の造形など見事なものです。実は下半身は腐ってなくなっていますが。
700年頃のものとされています。まさか!?と思うかもしれませんが、どうも本当らしいんですよ。この肉感的な造形は、当時流行のカシミール様式そのものですし。
Chaurasi寺院群については、
2014年3月4日火曜日 ヒマーチャル小出し劇場(8) のんびり寺院群チョウラースィー
をどうぞ。
イイィ、ですねぇ、イイ。
返信削除カシミール様式ってのはどういったところなんでしょうか?
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返信削除おや?削除されていますね。
返信削除参考書の紹介、ありがとうございます。
書籍名はメモしときました。
いえ、うっかり消しちゃっただけで他意はありません。また上げときます。
返信削除7~11世紀頃、いわゆる古代カシミール様式像の特徴としては、なんといっても筋肉質。モリモリしています。腰はキュッとしまり、安定感のあるドーンとした下半身。そして大きな目。このへんが特徴ですね。濃いルックスです。
返信削除実は、布に隠されたGaneshも腹筋がすごいんですよ。いわゆるSix Packsです。
カシミール様式を知るまとまったサイトはあまりないんですが、画像検索で「ancient kashmir sculpture」で検索していただくと、名品の数々を見ることができます。
私は、カシミール美術の勉強については、
・Pratapaditya Pal (ed.)(1989) ART AND ARCHITECTURE OF ANCIENT KASHMIR.viii+136pp. Marg Publications, Bombay.
を愛用しています。
カシミール様式、旅行人『ラダック』の中では、ムルベクやカルチェ・カルの磨崖仏ですね。そして、セットとなっているフレーズは、「肉感的」。
返信削除そうか、「カシミール様式=肉感的」なのだな。
カルチェ・カルのチャンバ像はもう、本家を差し置いてでも「カシミール様式の代表作」としたいくらいそのものです。名作。
返信削除ムルベクの方は、基本カシミール様式でいいんですが、他の要素もあるような気はしています。衣の襞にこだわるガンダーラ様式を引きずったカシミール様式よりも、もっとインド的な感じです。顔がちょっとモンゴロイド的なのも気になります。
腰巻きがピタッと貼り付いたような造形は、グプタ様式の影響が強いかもしれません。これは古代カシミールでも見られる造形ではあるので、一概にカシミールとの関係を否定できるほどではないのですが。
いずれにしてもムルベク・チャンバは、まだまだ謎の多い磨崖仏です。
なお、これが「観音という説が最近は有力」などとデマをばらまいている人がいるようですが、無視して大丈夫です。
弥勒と観音では持ち物は違うと思いますが、
返信削除なぜ「観音という説が最近は有力」となるのでしょうか?水瓶ですか?
さあ、わかりません。頭上の仏塔、龍華で弥勒菩薩に決まりで、ダメ押しで水瓶。議論の余地はないと私は見ています。
返信削除すみません、表題から逸れてしまいました。
返信削除「観音が定説」との記述のあるwebsiteに質問しときました。
既にご存知かもしれませんが、web上に宮治昭先生の論文がありました。
返信削除「弥勒菩薩と観音菩薩 ー図像の成立と発展ー」2013年(barc.ryukoku.ac.jp/research/upfile/No.12-02.pdf)
これに由ると、グプタ朝〜ポストグプタ朝(5〜8世紀中頃)では、「この時代には、弥勒と観音が行者的と王者的という対照的な性格は明確ではなくなり、頭飾・冠飾、標識、持物などの特徴が弥勒と観音において相互に混淆する現象が生じているのである。ただ、蓮華と龍華はそれぞれ観音と弥勒の固有の持物となっている。」(第3章1節)とありました。
この論文の存在は知りませんでした。ご紹介ありがとうございます。
返信削除読んでみると、これまで宮治先生が何度か書いておられた観音&弥勒図像学の集大成といったところですね。
宮治先生ご自身も挙げておられる
・宮治昭(1999)『仏教美術のイコノロジー インドから日本まで』. pls+vi+266+4pp. 吉川弘文館, 東京.
・宮治昭(2004)『仏像学入門 ほとけたちのルーツを探る』. ii+323+15pp. 春秋社, 東京.
→(2014)『同 増補版』. 春秋社, 東京.
にも、同様の論考が収録されています。
インド宗教図像学では、
・宮治昭(1981)『インド美術史』. pls+23+239pp. 吉川弘文館, 東京.
→再発:(2009)『インド美術史』(歴史文化セレクション). 吉川弘文館, 東京.
も、もちろん必携。こちらでは、ヒンドゥ美術・建築も取り上げてられています。
チベット仏教図像は、グゲ時代にはかなり定形化されて来ますが、よくわからない変な図像もまだ見ます。ところが13世紀になると、仏教図像はカッチリ定められて、例外はほとんどなくなります。同定も容易(ただし憤怒尊が山のように出現し、そっちは多すぎてわけがわからない)。
この時代の前8〜12世紀、仏教図像はパーラ朝でガチガチに定形化されたようです。それがネパール経由でチベットに入ってきました。
10世紀以前の仏教図像(チベット仏教というよりもうインド仏教)の勉強には、
・頼富本宏+下泉全暁(1994)『密教仏像図典 インドと日本のほとけたち』. pls+308pp. 人文書院, 京都.
も必携。入手困難かもしれませんが。この辺をちゃんと見れば、観音と弥勒を間違えるようなことはないです。
まあ、10世紀以前の図像はまだまだ定形化されていないので、同定が難しいのが多いのは確かですけどね。
すんません。またうっかり消しちゃったみたいです。戻しときます。もし投稿者削除だったらごめんなさい、そん時は教えて下さい(でもそれできるのかも知らないけど)。
返信削除Naruni Ratna2015年3月31日 5:05
丁寧な解説と参考書の紹介ありがとうございます。『インド美術史』、『密教仏像図典』は持ってるんですけどね。ちなみに『密教仏像図典』はweb書店でお安く手に入るようです。
あぁ、完全に、表題からは外れてしまいましたね。