(2)(4)は密教の諸尊でしたが、(1)十一面千手観音像、(3)極楽浄土図(阿弥陀如来)は、顕教の諸尊なので、日本人にも馴染みが深く、ちょっとホッとするかもしれません。

トラチャン+田中(1997), p.10
(1)十一面千手観音像は、中央に大きく観世音菩薩 སྤྱན་རས་གཟིགས་ spyan ras gzigsを描き、向かって左手に文殊菩薩 འཇམ་དབྱངས་ 'jam dbyangs、向かって右手に金剛手菩薩 ཕྱག་ན་རྡོ་རྗེ་ phyag na rdo rje(大勢至菩薩 མཐུ་ཆེན་ཐོབ་ mthu chen thobと同体とみなされる)が描かれる。
この三尊の組み合わせは、三部主尊 རིགས་གསུམ་མགོན་པོ་ rigs gsum mgon poと呼ばれ、チベット仏教では最もポピュラーな図像です。
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本尊では十一面千手というお姿でしたが、その足元には四臂観音 སྤྱན་རས་གཟིགས་ཕྱག་བཞི་པ་ spyan ras gzigs phyag bzhi paのお姿も見えます。より親しみやすいお姿です。
その両側は観音菩薩の息子・娘らしいのですが、観音菩薩の描き方にもいろいろ流派があって、その中の「ソンツェン・ガンポ王流」に特有の尊格らしいです。このへんはよく知らない。
十一面千手観音の頭上には、観音菩薩の本地である阿弥陀如来が描かれます。観音菩薩は阿弥陀如来の属性のうち、慈悲の化身であるため、両者が一緒に描かれるケースが多いわけです。
「観音菩薩は阿弥陀如来の弟子」と解されることもあります。チベット仏教ゲルクパでは、ダライ・ラマは観音菩薩の化身、パンチェン・リンポチェは阿弥陀如来の化身とされます。
先代が遷化され、新しい化身が選ばれた時、両リンポチェの間に年齢差が生じている場合が多いです。その場合は、特にこの二大名跡のうちの年上の方が、年下を指導し協力しあうという特別な関係があります。
現在の政治状況がそれを許さないのは、実に残念。
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四隅の内、向かって左上はソンツェン・ガンポ王ではないかと思いますが、よくわかりません。
向かって右上は緑多羅菩薩 སྒྲོལ་མ་ལྗང་གུ sgrol ma ljang gu。
向かって右下はよくわかりません。こういった護法尊 ཆོས་སྐྱོང་ chos skyongも数が多くて、なかなか全部は把握できない。
向かって左下は毘沙門天(多聞天) རྣམ་ཐོས་སྲས་ rnam thos sras。四天王 རྒྱལ་ཆེན་བཞི་ rgyal chen bzhiの中から、この毘沙門天が単独で描かれるケースが多いです。その場合はでっぷりとした腹が特徴で、財宝神としての属性が強調された姿になります。
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各尊格を見て気づくのは、チベット仏教画のタッチではあるのだが、現代ヒンドゥ教大衆画の影響がかなり見られること。道端で売られていたり、どの民家でも貼られているアレですね。
そのスタイルは、19世紀のKerala出身の画家Raja Ravi Varma राजा रवि वर्मा (1848~1906)が発明したもので、西洋絵画の手法でヒンドゥ神画を描いていき、絶大な人気を得たものです。実はこれは、インド古来の絵画や、ミニアチュールの伝統とは全く断絶した絵なのです。
現代インドでは、どの宗教画家もVarma画法の模倣で描いているわけですが、様式化が著しく、まるで全部同じ画家が描いているかのように見えてしまいます。
その影響がチベット仏教画にまで及んでいるというのがおもしろいし、またそこがNepalらしいといえるかもしれません。
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Varmaについて、より詳しくは、
・長谷川明 (1987.11) 『インド神話入門』(とんぼの本). 119pp. 新潮社, 東京.
・ウィキペディア >ラヴィ・ヴァルマ(最終更新 2016年10月30日 (日) 21:48)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%9E
を見てほしい。
まだツヅク
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