・池田巧+中西純一+山中勝次 (2003.7) 『活きている文化遺産デルゲパルカン チベット大蔵経木版印刷所の歴史と現在』. 214pp. 明石書店, 東京.
装幀 : 柴永文夫+前田眞吉
という本があります。デルゲ・パルカンに関する本としては、日本で唯一です。
他に、デルゲ/デルゲ・パルカンに関する日本語論文、中文書籍、欧文書籍については末尾にまとめておきました。
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デルゲ・パルカンに関する日本語資料としては、もちろん最重要資料なのですが、残念ながら展覧会会場や売店にはありませんでした。おそらく絶版なのでしょう。
明石はおもしろい本をどんどん出してくれるが、絶版も早い。あっという間に絶版になって、ゾッキに流れているのをよく見かける。
これを機に再発してほしいもの。講談社学術文庫でもいいぞ。
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その中から、この展覧会で展示されている大判版画の版木が、どのように保管・印刷されているかの写真を紹介しておこう。
同書, pp.44-45
デルゲ・パルカンの主要業務は言うまでもなく経典の印刷。そちらでは二人一組になって、ローラーなども使い、手早く印刷が進められている。
しかし、仏画のような大型版画は、上手右のように、熟達した工人が一人でじっくり印刷を進めるらしい。
上掲書著者らの協力も得て、こういった写真の提供も受けることができたら、より深みのある展覧会になるだろう。
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デルゲ・パルカンで印刷されている仏教図像については、このような形でもまとめられている。
・Josef Kolmaš (2002) ICONOGRAPHY OF THE DERGE KANJUR AND TANJUR. 286pp. Vedams ebook, New Delhi.
Cover Design : Dushyant Parasher
これは、デルゲ大蔵経のカンギュル བཀའ་འགྱུར་ bka' 'gyur 仏説部(カム/アムド方言だと「カンジュル」になる)とテンギュル བསྟན་འགྱུར་ bstan 'gyur 論疏部(解説・注釈、カム/アムド方言だと「テンジュル」になる)の両端に記された諸尊の図像のみをピックアップしてまとめたもの。
同書, p.153
印刷は不鮮明だが、チベット仏教の尊格がほとんど網羅されているので、図像学の勉強にはかなり役に立つはず。この本では各尊格のチベット名もindexで網羅されているので、そういった使い方もできる。
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前掲の池田ほか(2003)より、この図像がどういった形で経典に収録されているか、示しておこう。
池田ほか(2003), pp.48-49
デルゲ版大蔵経では、カンギュルは赤字、テンギュルは黒字で印刷される。
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Kolmaš先生は、チェコのチベット学者。後述の欧文書籍リストを見てもわかるように、デルゲに関する研究では第一人者だ。現在84歳とご高齢ではあるが、次回またこの展覧会があるようなら、是非Kolamš先生を呼んで講演をお願いしてほしい。
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最後に、福光美術館への行き方。主に2つ。
福光への行き方(Google Mapより)
(1) 北陸新幹線・新高岡駅から
JR城端線で新高岡から9つ目の駅が福光駅。本数は1時間に1本くらい。40分で福光。
城端線は電化されていない。東京周辺ではもはや見ることのない、1970年代製造(と推定)の古いディーゼルカーがいろいろ走っている。撮り鉄にはちょっと狙い目の路線かも。
福光駅~福光美術館(Google Mapより)
福光美術館は、福光駅から北西に約2km。歩いても十分行けるが1時間くらいかかる。駅からはバスもあるが、よく知らない。
美術館の隣に川合田温泉という宿がある。行きの当日はそこに宿泊し、翌朝美術館に、というプランは、我ながらなかなかいいアイディアであった。
宿や温泉は、他にも福光駅周辺・郊外にいくつかある。
また、棟方志功記念館・愛染苑、福光中心部・味噌屋町の古い町並みなど、他に見所もいくつかあるので、時間に余裕があればあちこち行ってみても面白いと思う。
(2) 金沢から
北陸新幹線などで金沢に行き、そのついでに福光美術館に行ってみるのもいい。
金沢~福光~井波は、加越能バスが毎日6往復運行。金沢から、福光美術館最寄りの「道の駅福光」までは45分くらい。金沢-福光は充分日帰りできる。
道の駅から美術館へは、30分ほど歩く。
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デルゲ/デルゲ・パルカンに関する日本語論文にはこのようなものがある。
・中西純一 (1997.1) チベット デルゲパルカン. 季刊民族学, vol.21, no.1, pp.28-43.
・松村恒 (1997.7) チベット大蔵経デルゲ版の開版印刷について. 香散見草 (近畿大学)中央図書館報, no.27, pp.12-16.
・中西純一 (1999.4) チベット徳格印経院を調査して. 月刊しにか, vol.10, no.4, pp.2-5.
・鎌澤久也 (2000.10) FRONT PICTORIAL 長江上流域の人びと (2) 徳格の印経院. Front, vol.13, no.1, pp.59-63.
・鎌澤久也 (2000.12) 長江源流行 (21) 徳格・最後の印経院. 月刊しにか, vol.11, no.12, pls.+pp.102-103.
・川田進 (2008.10) デルゲ印経院とデルゲ土司に見る中国共産党のチベット政策. 大阪工業大学紀要 人文社会篇, vol.53, no.1, pp.19-50.
・小林亮介 (2011.3) 一九世紀末~二〇世紀初頭、ダライラマ政権の東チベット支配とデルゲ王国(徳格土司). 東洋文化研究, vol.13, pp.21-52.
中文書籍としては、
・中国科学院民族研究所四川少数民族社会歴史調査組・編 (1963.7) 『甘孜藏族自治州徳格地区社会調査報告』. 中国科学院民族研究所四川少数民族社会歴史調査組.
・中国科学院民族研究所四川少数民族社会歴史調査組・編 (1963.12) 『徳格更慶、甘孜麻書社会調査材料 甘孜藏族自治州』. 中国科学院民族研究所, 北京.
・四川民族出版社・編 (1981.8) 『徳格印経院』. 四川民族出版社, 成都.
・策旺・多吉仁増 (1990) 『徳格土司傳 藏文版』. 四川民族出版社, 成都.
・四川省徳格縣志編纂委員会・編 (1995.5) 『徳格縣志』. 四川人民出版社, 成都.
・楊嘉銘 (2000.4) 『徳格印経院』(西南人文書系). 四川人民出版社, 成都.
・唐拉津旺 等・画, 根秋登子+多智+雄呷・藏文注釈, 戴作民・漢文翻訳 (2002.6) 『徳格印経院藏傳木刻版画集』. 四川民族出版社, 成都.
・蒋彬 (2005.9) 『四川藏区城鎮化与文化変遷 以徳格県更慶鎮為个案』. 巴蜀書社, 成都.
・津爾多吉 (2006) 『走過康巴文明的皺襞 徳格土司歴史淵源与康巴文化発展略述』. 四川華彩文化傳播, 成都.
・沢旺吉美・主編 (2010.10) 『徳格印経院』. 四川美術出版社, 成都.
・徳格県寺院志編委会・編 (2011.11) 『徳格県寺院志』. 民族出版社, 北京.
欧文書籍にはこのようなものがある。
・Josef Kolmaš (1968) A GENEALOGY OF THE KINGS OF DERGE : SDE-DGE'I RGYAL-RABS (Dissertationes orientales, v.12). Oriental Institute in Academia, Publishing House of the Czechoslovak Academy of Sciences, Prague.
・Josef Kolmaš+Československá akademie věd. Orientální ústav. Knihovna (1978) THE ICONOGRAPHY OF THE DERGE KANJUR AND TANJUR : FACSIMILE REPRODUCTIONS OF THE 648 ILLUSTRATIONS IN THE DERGE EDITION OF THE TIBETAN TRIPITAKA, HOUSED IN THE LIBRARY OF THE ORIENTAL INSTITUTE IN PRAGUE.(Śata-pitaka series, Indo-Asian literatures, v.241). Sharada Rani, New Delhi.
→ Reprint : (2002) Vedams, New Delhi.
・Peter Kessler (1983) DIE HISTORISCHEN KöNIGREICHE LING UND DERGE (Laufende Arbeiten zu einem Ethnohistorischen Atlas Tibets, EAT, Lfg. 40. 1). Tibet-Institut, Rikon(Swiss).
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