続いてドゥー མདོས་ mdosの儀式。
これは厄を絡めとる儀式です。人の体や心、土地、財産、家畜に振りかかろうとする厄を、その前に絡め取ってしまうのです。
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ドゥーとはそのための祭壇のことです。祭壇・儀式ともドゥーと呼びます。儀式の方は、མདོས་གཏོ་ mdos gtoと呼ばれることもあります。ラダックではドスモチェ མདོས་མོ་ཆེ་ mdos mo cheと呼ばれています。
Tucci(1988) p.174
祭壇の中央には三階建の建物のミニチュア。これはMeru山 རི་རབ་ ri rab 須弥山を意味します。中に施主の人形を入れます。建物の前には男女の依代であるポルー ཕོ་གླུད་ pho gludとモルー མོ་གླུད་ mo gludを置きます。これはシンチャン ཤིང་བྱང་ shing byang 清浄なる木板にそれぞれ男、女の姿を描いたもの。
Tucci(1988) p.178
そして建物の上や祭壇の周囲に、ナムカー ནམ་མཁའ་ nam mkha' を置きます。ナムカーは棒を十字に組んだものに糸を張り巡らせたもの。これが厄・悪霊を絡めとってくれるわけです。まさに「蜘蛛の巣」そのものです。ナムカー自体がドゥーと呼ばれることもあります。
Tucci(1988) p.182
建物の周囲には供物も並べます。これは厄や悪霊への供物になります。
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ドゥーの儀式は、まず観想によりこの祭壇に須弥山を現出させます。そしてそこに守護尊に降臨いただきます。
守護尊のお力を借り、ナムカーによりドンを捕まえます。そして供物を捧げ施主の体から去るよう諭します。その際に去る道筋も丁寧に説明します(ལམ་བསྟན་ lam bstan)
これでドンが去る場合もありますが、中には供物の受け取りを拒否するドンもいます。その場合は少し強い調子でドンを脅します。
Tucci先生の記述では、ドンを天界に送るなどの儀軌はないのですが、おそらくそういった儀軌もあるのだと思います。
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