ドクは厄祓い・悪霊祓いの中でも最も激しく際どい儀式でしたが、滅多に行われることはありません。
日常的に行われるのは、軽い厄祓いの儀式です。Tucci(1988)ではこれをイェー ཡས་ yasと呼んでいます。
イェーはドゥーと似ていますが、祭壇も供物も小規模なもの。最後に供物を十字路に捨て厄 གདོན་ gdonを供養します。
Tucci(1988)ではイェーの詳細についてはあまり詳しく記述されていないのが残念です。
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系統だって調べているわけではないのですが、チベットの厄祓い系統の報告にはこのようなものもあります。
・村上大輔 (2013) 悪霊ミカ祓いの祈祷書Mi kha'i bzlog 'gyur校注.国立民族学博物館研究報告, vol.38, no.1, pp.91-118.
https://minpaku.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=3846&file_id=18&file_no=1
これは、人の噂・悪口・嫉妬(མི་ཁ mi kha 人の口)が厄となって人に悪さをする、という理屈に基づき、これを祓う儀式。ラサの例です。
ドク བཟློག bzlog 調伏・度脱という言葉を使っていますが、
で用いられているbzlogよりはずっと軽い厄祓いの儀式です。こういった用語のヴァリエーションはまだまだよくわかっていないし、たぶん統一もされていない。
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・長野禎子 (2008) チベットにおける「ヤンを呼ぶ」儀礼. 四天王寺大学紀要, no.46, pp.433-463.
http://www.shitennoji.ac.jp/ibu/images/toshokan/kiyo46-27.pdf
こちらはさらに軽い、というよりは方向性が逆で、ヤン གཡང་ g-yang 幸運を呼びこむ儀式ヤングー གཡང་འགུགས་ g-yang 'gugs。
こちらも参考になるでしょう。主にアムドの例です。
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