こういったドン(厄・悪霊)を祓う儀式がいくつか紹介されています。
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まずはト གཏོ་ gtoの儀式。これはトルマ གཏོར་མ་ gtor ma(ツァンパや小麦粉でかたどった供物)を依代として用いる厄祓い・悪霊祓いです。
イダム ཡི་དམ་ yi dam(守護神)に降臨願い、そのお力によりドンを退治してもらいます。イダムは、イェシェ・ドルジェ・リンポチェやカルマ・チャクメーのシェードゥルではカンドマでしたが、その宗派、術者により様々です。しかし、主にシュンマ སྲུང་མ་ srung maやチューキョン ཆོས་སྐྱོང་ chos skyong(護法尊)など、忿怒相を示す神々であるのは同じです。
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まず黒いトウモロコシ粉で地を作ります。そこに三角形に作ったトルマを置きます。このトルマは悪霊自身の骨肉を象徴するものです。トルマの周囲には動物の内臓を置きます。これらを黒イバラ ཚེར་ཤིང་ནག་པོ་ tsher shing nag poの枝で囲い、頭蓋骨 ཐོད་པ་ thod paを置きます。
瞑想しイダムに降臨願い、トルマに清めの儀式を行います。そしてこのトルマを悪霊が住む方向に投げつけます。これでドンを退治したことになります。
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こういった厄は、ランチャク ལང་ཆགས་ lang chagsとも呼ばれ過去に積まれた業の負債 བུ་ལོན་ bu lonと考えられています。
トの儀式の最後には「ལང་ཆགས་སོང་། lang chags song/ སབུ་ལོན་སྦྱང་། bu lon sbyang/(厄は去った。負債は清算された。)」と叫びます。
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Tucci先生がこの儀式について記述しているのは仏教の章ではなく、民間信仰(Folk Religion)の章です。
しかし業の思想が現われている点では、かなり仏教化されています。おそらく仏僧(特にニンマパ僧)がこの儀式をとり行うことも多いのでしょう。
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この儀式は、仏教僧院の祭りでも取り入れられています。チャムའཆམ་ 'cham 仮面舞踊の最後に、トルマを投げ捨てたりあるいは川に流したりする儀式がそれです。
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