2016年6月7日火曜日

代々木の魔窟 東豊書店 健在なり!

約10年ぶりに「代々木の魔窟」こと東豊書店に行ってきました。

東豊書店は代々木にある中文書店。東方書店ではないよ、お間違えないよう。

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代々木駅西口を出てすぐ。駅前の古ぼけたビルが代々木会館。

これは古いビルで、萩原健一+水谷豊+岸田今日子(故人)+岸田森(故人)のTVドラマ「傷だらけの天使」(1974-75)のペントハウスがあった(今もある?)場所です。

20年位前から取り壊しの噂があり、テナントは次々退去。いまや残っているのは路面の立ち食い寿司屋と3階の東豊書店のみ。かれこれ20年近くほぼ廃墟状態なんだが、なぜか一向に取り壊しにならない。

「傷天」マニア、あるいは廃墟マニアが、内部や噂の屋上に侵入を試みているのも相変わらず。

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その3階に残るテナントが東豊書店。ここは東京でも屈指の「魔窟」として有名。なにをかくそう2chでここを「代々木の魔窟」と命名したのは私なのだ。

入ってすぐに本の壁に圧倒されます。2m位の高さの本棚に本がぎっしりつめ込まれ、本棚の上にも天井までぎっしりと本が積み上げられている。一度崩れてきてひどい目にあった。

通路も本が積まれ、荷物があると通路を通れない。通路自体も幅1mもないので、下の段の本を見るだけでも一苦労。上を見上げると、天井まで積まれた本の圧迫感が強烈。閉所恐怖症には耐えられないだろう。

入り口右手の奥地ともなると、本棚には三重に本が詰め込まれ、「掘り出す」作業が必要となる。その辺では地理書で面白いのを見つけたなあ。まさに「掘り出し物」。

・周希武・編著, 呉均・校釋 (1986.3) 『玉樹調査記』(西北史地資料叢書). 215pp. 青海人民出版社, 西寧.

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棚に入っている本はギューギューにつめ込まれているので、なかなか取り出せない。一度取り出すと、棚に戻せないこともあるので注意。

しかし棚の本はまだ良い方で、積まれた本になるともはや取り出す気にもならない。押そうが引こうが、びくともしない。本がこんなに重いとは・・・(知ってたけど)。

高さ3mに積まれた本の下側に埋設されている本を取り出すには、おやじさんに頼んでたっぷり5分は覚悟。それで取り出した本が3000円だったりすると、冷や汗が・・・。

こんだけ苦労させて、買わずに帰れますか?ええ、こないだも結局買いましたよ。

・石碩 (2001.2) 『藏族族源与藏東古文明』(西藏文明研究系列). 3+314pp. 四川人民出版社, 成都.

珍しい本なので買ってしまったが、読んでちょっとがっかり。あああ・・・。

これならもう少しお金を足して『漢藏史集』でも買ったほうが良かったか・・・。いやいや、よそだともっと安いんだな、最近の本は。

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ここを知ったのは1990年代後半とかなり遅いのだが、1980年代の古い本が多かった(今も不良在庫として大量にあるが)。

1980年代の中国の本は印刷も装丁も悪いが、ものすごく安かった。それでチベット関係の重要な中文書を、たくさんここで買った。ここは、その時代の古い本が狙い目です。

ある時、

・蘇晋仁+簫練子・校証 (1981.12) 『冊府元亀 吐蕃史料校證』. 6+4+394pp. 四川民族出版社, 成都.

が必要になった。

その頃、東豊書店には1年くらい行っていなかったのだが、「そういえば、あそこの入口から三列目通路左側、奥から2つ目の棚、下から2段目、左から3分の1くらいの所で見たな」と思って行ったら、その通りの場所にあった。

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実は、その辺に長年あった『吐蕃史』、『藏族史料集(一)~(三)』、『通鑑吐蕃史料』などをごっそり買ったのは私だ。しかし、上記の『冊府元亀 吐蕃史料校證』だけは買いそびれて置いてきたのだった。

これは今やなかなか手に入らないし、ほんとに役に立ってるし、買ってよかったと思ってる。

『藏族史料集(四)』を買わなかったのはなぜかと言うと、なかったから(笑)。それはついこないだ半年ぶりに行った本郷の琳琅閣で、100円でようやく入手したからご心配なく(誰も心配してないが・・・)。

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チベット関係の古い中文書は、さっき言った場所に今もいくらか残ってる。いくつか残っていた掘り出し物を紹介しておくと、

・祝啓源 (1988.8) 『唃厮囉 宋代藏族政権』(西北歴史叢書). 3+3+327pp. 青海人民出版社,西寧.

青唐王国に関する研究書では最重要書。これも今やなかなか手に入らない。それに安いぞ!急げ。これは棚にある。

その上を見上げると、私の大好きな

・青海省社会科学院藏学研究所・編, 陳慶英・主編 (1991.6) 『中国藏族部落』. 14+5+651pp. 中国藏学出版社, 北京.

が2冊も埋設されているではないか。取り出す気になった人だけゲット可能。かなりの難行になると思うが・・・。

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入口付近の2mほどの山には5・6冊チベット関係本が埋設されている。ただし、これらは比較的新しい本なので高い。要注意。

帳場の裏手、天井近くにも2列に渡りチベット関係書が埋もれているので、苦労したい人はどうぞ(私は探索を断念した、首痛いし)。

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もちろん中国史関係もたくさんあるし、実はここは漢方医学本の宝庫なのだ。特に台湾方面のもの。

おやじさんは台湾出身の方。年はいくつか知らない。こないだ10年ぶりにお会いしたのだが、全然印象が変わっていない。謎。

そうそう、奥さんにもこないだ初めてお会いした。本に埋もれての店番は嫌らしく、外で本を読んでおられたな。

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しかしここは行くたびに「大丈夫か?」と心配になる。他に入居テナントがいないのをいいことに、階段にもますます本が増殖していたし、今後どうなるんだろう?

前に「ここは取り壊しされないんですか?」と訊いたら、「だいじょぶだいじょぶ。このビルはネ、権利関係がややこしくなってるから、当分だいじょぶよ」。これが15年位前。ホントだった。

「この店、誰か継いでくれる人がいたら、譲ってあげるんだけどねえ」と聞いたのが10年前。それから何も変わっていない、いやはや。

2011.3.11の時はどうなったか、というのは恐ろしくて訊けませんでした。

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物好きな人は夏に行ってほしい。熱とカビ臭さと本の圧迫感との我慢比べになるから。おやじさんがランニング姿で迎えてくれます。

魔窟 東豊書店 健在なり!

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(追記)@2016/06/14

ちょっと気になって、Twitterで「東豊書店」と検索してみたら、なんかやたら濃い情報が続々。みんな大好きなんだね、東豊書店。

おやじさん87歳だって。見えないなあ。積まれた本延々どかすのも「自分でやりますから」と言ったのに、ずんずん一人で作業できちゃうし。すごいね。

2011.3.11以降数ヶ月間閉店していた、との情報あり。やっぱりか~。

みんな冷やかしに行くだけじゃなくて、買ってね。

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(追記2)@2016/06/14

こないだお会いしたのは奥さんかと思っていたが、もしかすると娘さん???。おやじさんより大分若い気がしたが・・・。もう、ホント時間も年も、ナニがなんだかわからなくなる、あの魔窟は。

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(追記3)@2016/09/22

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2016年9月21日水曜日 代々木の魔窟 東豊書店 続報

に書きました。こちらもどうぞ。

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