Bisket Jatraの柱yosinの別名lyesing dha:を調べてみましょう。
まず、わかりやすい「sing」から。これは前回の「sima(木)」と同じとみてよいでしょう。
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その前にくっつく「lye」ですが、Bhuju(2010)では、「lye」そのものはありません。似たような単語を探してみましょう。
似たような単語はたくさんあるのですが、
(1a) choose VI ल्यये lyaye
(1b) elect VT ल्यये lyaye
(2) harvest VT लये laye
これら2群を挙げれば充分でしょう。
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(1)だとすると、「lyesing」=「選ばれた木」という意味になります。
もし正しければ、祭儀のために森から木を選び、伐採して柱に仕立てたことを表現した用語になるかと思います。
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それよりも(2)案の方が断然魅力的です。(2)だとすると、「lyesing」=「収穫の木」という意味になります。
「木から収穫物が得られる」という意味ではなく、「収穫をもたらしてくれる木」という意味でしょう。
(2)の可能性の方が高いと思いますが、正確なところは地元の人に訊かないとわかりません。
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「dha:」ですが、これは
god N द्यः dyah
で問題なし。インド・アーリア語のdevaがなまってネワール語化したものです。似たような単語に「deo」というのもあります。
この単語はBunga Dyahなど、ネワール語の神の名でよく出てきます。
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まとめると「lyesing dha:」=「収穫の木の神」となります((2)の意味だったとして)。
「yosin」、「lyesing dha:」を合わせて考えると、Bisket Jatraの柱は「収穫を願い、これを叶えてくれる樹神」ということになるでしょう。
Bisket Jatraの現在の祭儀や伝わっている縁起からでは全くわからない、聖樹信仰の姿が浮かび上がってきました。
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これは、前述のBisket Jatraの縁起とはだいぶ違う印象です。「悪役蛇退治を記念する祭り」と「樹神への豊穣祈願の祭り」とでは、祭りの主旨は全く違うように見えます。
しかしこの間に、ある存在を咬ませると解釈は容易になります。現在のBisket Jatraでは巧妙に隠蔽されている、その存在とは「Naga」。
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