2017年1月29日日曜日

ヒマーチャル小出し劇場(38) Kinnaur Labrang Kharに屋根がついてる!?

Labrangとは、Middle Kinnaurにあるリンチェン・サンポゆかりの村Kanamの隣り村。Kinnaurではおなじみの角塔砦がそびえる村だ。













私が初めて訪れた1997年当時は、ガイドブックはもちろんのこと、学術書などにも、Labrangについてはいっさい情報がなかった。

Kanamに行った時に、谷を挟んで変なもの(Labrang Khar)があるのを見つけてはじめて発見。驚いたものです。奥が深いんですよ、Kinnaurは。

例によって、ヒマーチャル・ガイドブックのボツ原稿から。

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◇ Labrang བླ་བྲང་ bla brang लबरंग <2940>

Kanam ཀཱ་སྣམས་ kA snamsから谷を挟んで対岸に位置する急斜面に開けた村。人口約700人。リンク・ロードからは約200mの急登。

村を睥睨する角塔城跡が遠くからもよく目立つ。この他興味深い寺院がいくつかある。集落内はチョルテンやマニ壇だらけで、ひときわチベット色の濃い場所。斜面に密集して立ち並ぶ住宅はいずれも2~4層の立派なもので、上部は張り出しバルコニーになっており、村全体が一つの要塞のようだ。

◆Labrang Khar བླ་བྲང་མཁར་ bla brang mkhar

村の南側最上手に立つ7層の大角塔建築。その手前がSakangshu Mandir。Labrang KharはMorang Kharよりも一回り大きく高さ約30m。高台に立っていることもあり実に勇壮だ。

これもMorang Khar同様、地元のThakurによって建てられたものらしく、中世の集落間抗争時代のなごり。それにしても村の規模には似つかわしくない大きさだ。

壁はおなじみ、平石を積んだ層と太い角材を交互に積み上げたKatkuni構造。第5・6層と最上第8層には張り出しバルコニーが回してあったようだが、現在は骨組みが残るのみ。最上層は特に崩壊が著しい。内部には入れない。

その下手にもちょっと小振りの5層角塔が立つ。こちらは保存も良く、張り出しバルコニーが美しい。

(以下省略)

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で、ちょっと久々にLabrangを検索したところ、こんなサイトを見つけた。

・HubPages > Travel and Places > Visiting Asia > Southern Asia > India > Sanjay Sharma/The Kinner Tribe of Kinnaur (Updated on September 13, 2016)
http://hubpages.com/travel/The-Kinner-Tribe-of-Kinnaur

真ん中あたりのHouses in Kinnaurで、左から3番目の写真をクリックすると
https://usercontent2.hubstatic.com/8979103_f520.jpg

Labrang Kharが現れるのだが、なんと驚いたことに豪華な屋根がついている。バルコニーも新しくつけられている。

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角塔型の寺院・砦は、Lower KinnaurやShimla丘陵では雨や雪が多いので、反り屋根がついているが、Himalaya主稜を越えてチベット高原側のMiddle Kinnaurより上手に入ると反り屋根はなくなる。

これはHimalaya主稜を超えたところではぐっと降水量が減るから必要なくなるのだが、それはMorang Kharなども同じ。

上記サイトのずっと上の方、4. Gandharvas
https://usercontent1.hubstatic.com/8979106_f520.jpg

には、1860年のLabrang Kharの写真があり、私が撮った1997年の写真と同じく、屋根はない。おそらく昔からこうだったはずだ。

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いやあ、なんか違和感がすごいなあ。凝りに凝った屋根の意匠は、最近建てられた、あるいは再建された寺院の屋根とそっくり。これは、おそらく再現ではなく創作だろう。

日本だったら文化財に指定されるような建築をどんどん新しくしちゃう感覚は、日本人にはちょっと理解できない。観光客目当てなのだろうか?

あるいは、屋上はもともと土で固めただけなので、最近雨漏りがひどくなったのかもしれない。最近気候がだいぶ変わってHimalayaの裏手でも降水量が増えているし。

いつかまた行って、どういうことか理由を聞いてみたいところです。

2 件のコメント:

  1. こんばんは。
    2005年に、初めてKinnaurに、
    右手に青い本、左手にロンリープラネットを持って、
    行ってきました。
    当時は、あまり砦には興味がなかったので、
    気にしてなかったのですが、
    先日、その時の写真を見て確認しました。
    この砦には、屋根なかったです。

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    1. コメントありがとうございます。
      屋根がつけられたのは、やっぱりかなり最近なんでしょうね。真新しいし。2010年代になってからじゃないか、という気がしています。

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