2014年5月26日月曜日

チベット・ヒマラヤTV考古学(11) マナスル登山関連番組一覧-その1

マナスル(मनास्लु Manāslu)という山は、日本人にとって特別な山です。

第二次世界大戦後まもなくの苦しい時代、復興の象徴として再開された海外登山。その第一目標が、日本人初のヒマラヤ8000m級高峰、すなわちマナスルへの登山でした。

マナスルの世界初登頂という快挙が、プロレスの力道山、水泳の古畑広之進らの活躍と共に、日本人が世界へ向けての自信を取り戻す力になったのは間違いありません。

日本人が初めてチベット文化圏の映像に触れたのも、このマナスル登山隊が残した記録映像だったと思われます。

その後、1955年からの一連のカラコルム/ヒンドゥクシュ探検隊、1958年のドルポ探検隊と続き、彼らが残した文献・映像は、後にチベット・ヒマラヤ研究者・愛好家を生み出す原動力となっています。私もその末裔の一人といえるでしょう。

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日本のチベット・ヒマラヤ記録映像の原点といえるマナスル登山関係番組をまとめてみます。

全般的な参考:
・深田久弥ほか (1983) 『ヒマラヤの高峰2』. 白水社.
・薬師義美+雁部貞夫・編&藤田弘基・写真 (1996) 『ヒマラヤ名峰事典』. 平凡社.
・公益社団法人 日本山岳会 > 資料室 > 遠征記録 > マナスル Manasuruの歴史1950-1996
http://www.jac.or.jp/info/kiroku/1996/manasr-page.htm












マナスルの位置  (c) Google Map

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【 1953日本山岳会第一次マナスル登山隊関連 】

日本でTV放映が開始されたのは1953年(NHKが2月、日本テレビが8月)。放送時間も短く、コンテンツも少ない時代。マナスル登山映像もまとまった形ではまだTVには乗らず、劇場用映画として公開されたのみ(ニュースでは取り上げられたであろうが、その状況は把握できない)。

【映画】 『マナスル』 
1953秋公開 毎日新聞社
構成:木下正美、撮影:依田孝喜。
ネパール・マナスル山群の未踏峰マナスル(8156m)世界初登頂へ向けた1953年3~6月の日本山岳会第一次マナスル登山隊(隊長:三田幸夫)の記録映画。7750mまで到達したが登頂失敗。麓のチベット人集落サマ(Samagaon)の様子、チベット仏教なども紹介。チベット文化圏の映像が日本に紹介されたのは、これがはじめてと思われる。
参考:
・毎日新聞
・日本山岳会 (1954) 『マナスル 1952-3』. 毎日新聞社.

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【 1954日本山岳会第二次マナスル登山隊関連 】

1953年の第一次隊に続き、1954年3~6月第二次マナスル登山隊が派遣されたが、地元サマ住民の反対に遭いマナスル登山は断念。ガネッシュ・ヒマール(7406m)登山(登路不良により登攀断念)、ヒマルチュリ(7893m)登路偵察に切り替えた。
隊長:堀田弥一、隊員:竹節作太(報道斑、毎日新聞運動部長)、依田孝喜(報道斑、同写真部員)ほか。
三次にわたるマナスル登山隊では一貫して毎日新聞社が後援していたため、マナスル報道は毎日新聞系列の独壇場。しかし当時まだ毎日系列テレビ局はなく、テレビ報道は主に日本テレビが担当。
参考:
・日本山岳会 (1958) 『マナスル 1954-6』. 毎日新聞社.
・竹節作太 (1955) 『ヒマラヤの山と人』. 朋文堂.

世界めぐり マナスル  
1954初(15分) 日本テレビ
出演:竹節作太、依田孝喜。
出発前の抱負を語る番組と思われる。
参考:
・毎日新聞

登山マナスル  
1954春(15分) 日本テレビ
出演:三田幸夫(1953年の第一次マナスル登山隊長)。
第二次隊出発当日の壮行番組のようだ。
参考:
・毎日新聞

ヒマラヤ報告  
1954夏(30分?) 日本テレビ
出演:堀田弥一、竹節作太、依田孝喜。
第二次マナスル登山隊の報告。
参考:
・毎日新聞

マナスル登山隊  
1954夏(20分) NHKテレビ
出演:竹節作太。
同じく第二次マナスル登山隊の報告。
参考:
・毎日新聞

【映画】 『白き神々の座』  
1954秋公開 毎日新聞社
演出:高木俊朗、撮影:依田孝喜、語り:宇野重吉。
第二次マナスル登山隊の記録映画。
参考:
・毎日新聞
・日本映画データベース  http://www.jmdb.ne.jp/
・Gogh's Bar : MOUNTAIN MOVIE MANIA
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gogh0808/MotMovieList.htm

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【 1956日本山岳会第三次マナスル登山隊関連 】

1956年3~5月に派遣された第三次マナスル登山隊が、5月9日、11日の両日ついにマナスル(8125m)の世界初登頂に成功。日本人初の8000m級高峰制覇でもあった。
隊長:槇有恒、隊員:今西寿雄、加藤喜一郎、大塚博美、依田孝喜(報道班)ほか。
参考:
・槇有恒 (1956) 『マナスル登頂記』. 毎日新聞社.
・依田孝喜 (1956) 『マナスル写真集』. 毎日新聞社.
・槇有恒 (1957) 『マナスル』. 毎日新聞社.
・竹節作太 (1957) 『ヒマラヤの旅』. ベースボールマガジン社.
・日本山岳会 (1958) 『マナスル 1954-6』. 毎日新聞社.

【ラジオ】 週末クラブ 座談 マナスル登頂に成功して  
1956夏(30分) ラジオ東京
出演:槇有恒、今西孝夫。
マナスル登山隊員12名による座談会。ネパールで収録。
参考:
・毎日新聞

座談 マナスルの頂上に立ちて  
1956夏(45分?) KRテレビ
出演:槇有恒、今西寿雄、加藤喜一郎。
帰国した登山隊員が苦労話、エピソードを語り合う。出演者たちは、同日引き続きラジオ東京の座談会にも出演。
参考:
・毎日新聞

【ラジオ】 特別座談会 マナスルから帰りて  
1956夏(30分) ラジオ東京
出演:槇有恒、今西寿雄、加藤喜一郎、大塚博美、依田孝喜。
帰国したマナスル登山隊員たちが語り合う座談会。テレビに引き続き出演。
参考:
・毎日新聞

【ラジオ】 劇 マナスルの凱歌(全2回) 
1956夏(30分×2) ラジオ東京
作:並河亮、演出:和田清、語り:高島陽、詩の朗読:高橋和枝、出演:石黒達也、勝田久、久米明ほか。
マナスル登山隊の苦闘を描くドキュメンタリードラマ。現地で録音された雪崩の音、夜鳥の声、シェルパの歌なども効果音として使われている。
参考:
・毎日新聞

マナスル登山隊  
1956秋 KRテレビ
おそらく映画『標高8125米 マナスルに立つ』公開に合わせた宣伝番組。
参考:
・毎日新聞

【映画】 『標高8125米 マナスルに立つ』  
1956秋公開 毎日映画社
演出:山本嘉次郎、撮影:依田孝喜、語り:森繁久弥。
第三次マナスル登山隊の登頂記録映画。ビデオ化されている。この映画は大ヒットし、その後の登山隊・探検隊はこぞって記録映画を残した。
参考:
・毎日新聞
・日本映画データベース
http://www.jmdb.ne.jp/
・Gogh's Bar : MOUNTAIN MOVIE MANIA
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gogh0808/MotMovieList.htm

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