2017年3月9日木曜日

東京外国語大学「チベット牧畜民の仕事展」とSERNYA Vol.4

・東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・主催 『チベット牧畜民の仕事展』
会期:2017年2月13日(月)− 3月11日(土)土日休場
ただし2月18日(土)・19日(日)、3月11日(土)は開場
時間: 10−17時
会場:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所1階資料展示室(〒183-8534東京都府中市朝日町3-11-1)
tel/fax:042-330-5543
入場料:無料



に行ってきました。

詳しくはこちらでもどうぞ↓

・TibetanCinema/チベット牧畜民の仕事展 > 2016年12月12日月曜日 チベット牧畜民の仕事展
http://tibetanpastoralists.blogspot.jp/2016/12/blog-post.html

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ドクパ འབྲོག་པ་ 'brog paの生活でいっぱいです!楽しい!



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ドクパを「遊牧民」と訳する人が多い中、ここではちゃんと「牧畜民」と訳されていますね。

ヤルサ དབྱར་ས་ dbyar sa 夏営地とグンサ དགུན་ས་ dgun sa 冬営地で移動はするものの、場所は毎年決まっています。草地・水場を求めて、頻繁に移動しているかのような誤解を招きがちな「遊牧民」という用語を採用しなかったのは正しい。

Ladakhの民族ブロクパについて書いたものですが、一部牧民ドクパについても触れているこちらも参考までにどうぞ↓

2014年4月17日木曜日~29日火曜日 「ブロクパ」とはどういう意味か?(1)~(5)
2014年5月4日日曜日 ブロク・スカット('brog skad)の会話例

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「クサイ、クサイ」という前触れだったのですが、臭くありません!

ヤク尾の払子などもあったので、さっそく匂いを嗅いでみましたが全然たいしたことなかった。

と思ったのだが・・・その近くに立っていると、なにやら左の方から「唾液を煮染めたような匂い」がプ~ンと・・・。

そこには羊の毛皮がありました。模造品fake-furと共に。

いやあ、これはクサイ!というより懐かしい匂いです。チベットでは、どこもかしこも、大なり小なりこういう匂いが充満してますから。

さあ、これを嗅ぎに行ってください。普通の展示物や映像では感じられないものが、こういう匂いですから。その意味では珍しい展覧会です。

欲を言えば、乳製品の匂いもあればよかったなあ。

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一番の目玉は、現地で撮った映像「チベット牧畜民の一日」でしょう。会場で繰り返し上映されています。


Sernya, vol.4, p.44より

ドクパ一家の朝から晩までを追って編集したものです。撮影はカシャムジャ མཁའ་བྱམས་རྒྱལ་ mkha' byams rgyal。プロが撮った映像なのでクオリティは素晴らしい。

95分ありますから、ひと通り見るのも大変ですが、ぜんぜん飽きませんよ。

ドキュメンタリーと称していながら、実は半分フィクションみたいな映像も多い中、これは作為的な絵は一つもありません。一日中繰り返し流しておきたいほどです。

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欲を言えば、映像が撮られた場所、標高、家族構成などのバックグラウンドの情報がもう少し欲しかった。まあ、それはSERNYAの既存号を見れば、ある程度わかるのだが。また、これからさらに補強編集がなされるかもしれないし。

あと各チャプター、たとえば「夕方の乳しぼり」のタイトルにもチベット文字タイトルが欲しかったなあ。

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2017年3月11日(土)は展覧会最終日ですが、解説付きでの上映会があります。

・東京外国語大学広報マネージメント室/TUFS Today > チベット牧畜民のくらし(2017.3.8公開)
https://tufstoday.com/articles/170308-2/

–上映会『チベット牧畜民の一日』
最終日の3月11日(土)は、13:30から『チベット牧畜民の一日』の解説付き上映も行います。
日時:2017年3月11日(土)13:30-15:20(13:00開場)
場所:AA研大会議室(303)
使用言語:チベット語(日本語字幕つき)
参加費:無料、事前申し込み:不要

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会場では、出たばかりのSERNYA最新号も配布されていました。

・SERNYA編集部+チベット文学研究会・編 (2017.2) SERNYA VOL.4. 176pp. 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所, 府中.


ブックデザイン : 草本舎

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例によって目次を紹介しておきましょう。


同書, pp.2-3

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興味を引いた論考をいくつか。

・別所裕介・著, 蔵西・画 (2017.2) 空間を刷新する儀式「ドッカ・ペンバ」 牧畜社会の厄払いと年越し行事. Sernya, vol.4, pp.8-16.

昨年はンガッパ・イェシェ・ドルジェ・リンポチェがらみで悪霊祓い・厄祓いについて調べる機会が多かったのだが、そのアムド・ドクパ社会での例です。

私が調べたものとの類似性・違いがわかって非常に興味深い。

この世界は大変に奥が深いので、まずいろんな実例の紹介が増えることは実にありがたい。

参考までに、私が調べたものをまとめて紹介するとこうなります↓

2016年1月25日月曜日 ヒマーチャル小出し劇場(30) ンガッパ・イェシェ・ドルジェ・リンポチェとジルノン・カギェリン・ゴンパ/2016年1月28日木曜日 ンガッパ・イェシェ・ドルジェ・リンポチェ補足
2016年6月10日金曜日~8月1日月曜日 ンガッパ・イェシェ・ドルジェ・リンポチェの悪霊祓い(1)~(13)

後者は、最後のまとめがまだ書かれていませんが、って人ごとみたいですが(笑)。陰陽師、祈祷僧、日本の憑きもの、道教呪術、インド呪術まで手を広げて調べ出して、収拾がつかなくなってます。

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それにしてもSERNYA専属イラストレーター蔵西さんの絵のクオリティは一段と上がっている。絵の描ける人がいる学術報告が、いかに充実したものになるか思い知らされます。

むしろ蔵西さんがマンガの世界に戻ってこれなくなるんじゃないか、と心配。まあ、それは冗談としても。

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・平田昌弘 (2017.2) ユーラシアにおけるチベットの乳文化の体系. Sernya, vol.4, pp.36-39. 

これまで、内陸アジアの乳製品文化については、モンゴルのものが取り上げられる機会がほとんどだった。私も乳製品に関する本はたくさん持っているが、その内陸アジア乳文化のパースペクティブの中に、チベット乳文化を置いてみるという、最近ご無沙汰だったアプローチの論考。

地域の比較から、時間と人・文化の移動を読み取る、つまり歴史を読み取る、ことを心がけている歴史好きとしては、とてもおもしろい論考でした。

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・海老原志穂 (2017.2) ラダックで唯一の小説家 ツェワン・トルデン. Sernya, vol.4, pp.119-123.

Ladakhももう十数年行っていないので、こうした動きも全く感知できない人になってしまいました。昔は日本にいながらも、Ladakh Ladags Melong ལ་དྭགས་མེ་ལོང་། la dwags me long/という雑誌を購読していたりしたんですけどね。

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長くなったので紹介もこれくらいにしておきますが、会期もあとわずかですが、ぜひ行ってみてください。

これだけ充実した展覧会だと、日本中を巡回してもいいですね。もうオファーは来てるかもしれませんが。まあ、それだとスタッフが死んじゃうか・・・。

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(追記)@2017/03/11

映像「チベット牧畜民の一日」を見て、ふと思った疑問

(1) 犬がいない!

ドクパの家庭で犬がいない、というのは見たことない。しかしあの映像には、犬が全く出てこない。なぜだろう?

チベットの犬、特にドクパが飼っている犬はかなり凶暴だ。家族以外にはなかなか慣れない。よく来るお客にさえワンワン吠えまくる。私も何度も噛みつかれそうになった(投石で撃退)。

映像の家庭でも絶対、犬を飼っているはずだ。

おそらくだが、日本の研究者が長期滞在する間、犬に噛まれるのを防止するため、滞在期間中はどっかよそに預けていたんではないかと推察する。

チベットの犬は狂犬病の予防注射など受けていないから、噛まれたら狂犬病になってしまうおそれが充分あるのだ。

ということだと思っていますが、ホントのところは知りません。

(2) 便所はどうなっているんだろう?

これは、上の「犬がいない!」とも関係する話。

まあ、なくても当たり前なんだけど、映像には便所についての話がない。でも気になりますよね。どうなっているのだろうか?穴を掘ってためているのだろうか?それとも、そこら辺でしてしまうのか?

私は後者だと思いますね。となると、そこら辺がウンコだらけになる?

大丈夫なのです。ブツは全部犬が食べてくれるから。野糞をしていると、ドクパの犬たちが、それまでギャンギャン吠えていたくせに、前足をチョコンと揃えておとなしく終わるのを待っている。そういう世界です。

で、あの映像で、「犬を預けていた」とすると、その間ブツの始末はどうなるのか?などなど、とても気になります。

今日、上映会に行く人は、その辺を質問するのも面白いかも。誰かお願いします(笑)。

4 件のコメント:

  1. もっと臭うブツが一時あったんですが、あの日はなかったかな。嗅いでいただけなくて残念です。Ladakh Melong はチベット文字で書かれているんですか?

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  2. dekipemaさん、コメントありがとうございます。Ladakh Melongではなく、誌名もLadags Melongでした。修正しておきます。

    久々に引っ張り出してみたら、1994~98年の10冊、2001年の1冊が出てきました。この雑誌、見るたびにvol.1, issue 1になっていて、いったいどれくらい出ていたのか、さっぱりわかりません。

    内容はほとんどが英語、チベット文(ラダック語になっているかチェックできるほどちゃんと読んでいない)が数ページという構成です。後の号ではウルドゥー語のページもあります。一度blogでも紹介してみましょう。

    > もっと臭うブツ

    とは、たぶんヤク/ディのアレでしょう。アレをグチャグチャ素手でいじっている映像をどう感じるかで、チベット文化への相性が分かりそうですけど。

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    1. > 見るたびにvol.1, issue 1

      ハハハ! 大らかでいいですね。雑誌の紹介、ぜひお願いします。お待ちします。

      > たぶんヤク/ディのアレでしょう

      いえ、羊の毛皮でした。アレは全然においませんでした。鼻をくっつけてもまるで。

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  3. 最後のコメントが落ちてしまいました↓

    展覧会の最終日盛況となることをお祈りしております。

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