https://www.thenews.com.pk/latest/184849-Gilgit-Baltistan-Village-under-threat-from-glacier-as-all-routes-remain-blocked
Baltistanの奥地Arando(注)という場所で、氷河が崩壊し被害が出ているようです。
(注) Arandoはおそらくバルティ語(チベット語方言)の地名だが、チベット文字ではどういうスペルか今のところ不明。「ndo」はおそらく「མདོ་ mdo (川の)合流地点」。
------------------------------------------
Arandoの場所はこちら↓
Google Mapより
Baltistanの中心地SkarduからShigar Nalla沿いに北へ約80km。人口などはわかりませんが、Google Mapで見ると、住宅は50軒程度、人口は300人位でしょうか。
Shigar Nalla南河畔にありますが、Shigar NallaはArandoのすぐ上流(西)でその名をChogo Lungma ཆུང་ངུ་ལུང་མ་ chung ngu lung maと名を変えます。そして、その上流部には、長大な氷河が発達しています(Chogo Lungma Glacier)。
------------------------------------------
上記の記事では、氷河が「gliding=すべっている」と表現されています。そこで思い出したのが、以前取り上げた
2016年10月27日木曜日 ンガリー・アル・ツォ湖畔の雪崩の謎(続報)
2016年9月12日月曜日~2016年9月18日日曜日 ンガリー・アル・ツォ湖畔の雪崩の謎(1)~(4)
ここでは「サージ」という現象に起因する氷河の崩壊で、雪崩が平地を2km余りも滑って行くという、驚異的な現象を起こしていました。
このArandoでもこの氷河サージが起きているのではなかろうか?と考え、ちょっと調べてみました。
------------------------------------------
Google Mapより
これがArando周辺の衛星写真ですが、Chogo Lungma氷河の末端は、Arandoの西約1kmまで迫っています。
このChogo Lungma氷河が崩壊したのでしょうか?どうもそれは考えにくい。
というのは、上記アル・ツォ湖畔の雪崩は、山地の急傾斜地にある氷河が崩壊し、直下の平地になだれ込んだものでした。
ところが、Chogo Lungma氷河は、かなり上流までゆるい傾斜が続いています。たとえ仮にChogo Lungma氷河でサージ現象が起きたとしても、平地を1kmも滑る雪崩を発生させる重力エネルギーがあるような気がしない。
------------------------------------------
Arandoの南に急傾斜の谷があり、村のすぐ東には、この谷からもたらされた土砂が大量に堆積しているのが見える。雪崩を起こしたのはこちらの谷であろう。
よくよく見ると、その土砂は大量で、大きな岩も含んでいるなど淘汰が非常に悪い。通常の氷河末端河川でもたらされた、というよりは暴発的な雪崩、あるいは土砂崩れでもたらされた土砂のように見える。
------------------------------------------
Google EarthでArandoの北東から眺めてみましょう。
Google Earthより
かなり凶悪な地形であることがわかります。
最上流部には複数の氷河が発達していますが、中流部には氷河はありません。
しかしその山肌を見ると、明るくフレッシュな色をしています。この部分には最近まで氷河があって、それが崩壊して雪崩・土砂崩れを起こしたものとみられます。氷河が崩壊した際に、山肌も削り取りながら下って行ったのではないでしょうか。
歴史上それが何度も繰り返されてきたのでしょう。Arando周辺には分厚く土砂が積もり、扇状地とも崖錐ともつかない急斜面が形成されています。
------------------------------------------
もうちょっと引いた絵も見てみましょう。
Google Mapより
上流部には氷河が5本も発達していますね。中流部には氷河はありませんが、この写真は2016年に撮影されたもののようですので、そこにはまだ氷河は復活してはいないでしょう。
とすれば、今回崩壊を起こしているのは上流部にある氷河なのかもしれません。
(追記)@2017/02/11
と思ったら、拡大してよくよく見ると、中流部でも上の方にはすでに氷河がある。表面が汚れているので、わかりにくかった。失礼しました。
今回崩壊したのはこちらでしょうかね。
アル・ツォ湖畔の氷河崩壊では、降水量の増加によって氷河下面に水がたまり、氷河が滑り落ちる「サージ」という現象が想定されています。
しかしアル・ツォ湖畔の氷河崩壊が起きたのは夏でした。今回は真冬です。サージで説明できるのでしょうか?何か別のメカニズムなのかもしれません。
(追記)@2017/02/11
ニュースでは「氷河の崩壊」とされているようですが、ここ数日の積雪による表層雪崩が発生し、途中で氷河の一部を剥ぎとってその氷塊も到達した、ということかも・・・などとも考えています。
それよりも、今はArandoの村人への救援が重要。Arandoでは数日で3mの積雪があり、交通はシャットアウト。救援隊は徒歩でArandoへ向かっているとのことです。
被害が最小限に留まることを祈ります。
===========================================
(追記)@2017/02/14
Arandoの標高はというと、約2760m。Baltistanは低い。こんな奥地に行ってもまだ3000mに達しないのだ。
Arandoの美しい写真↓
・Twitter > PakistanTravelGuide@PakTravelGuide > Arando Shigar Skd , Gilgit Baltistan Pakistan ان وادیوں میں یونہی ملتے رہیں گے...
دل میں وفا کے دیے جلتے رہیں گے... By : ImtiZs photographY (9:31 - 2017年2月9日)
https://twitter.com/search?f=tweets&q=arando%20baltistan&src=typd
日付がごく最近だが、上記のニュースを見て貼ったのかもしれない。それにしてもすさまじい風景ですね。早く平穏な日々が戻ることを・・・。
ところで、この写真はArandoと言っても、本村から3kmほど東にある扇状地上の小さな集落(2710m)だと思う。分村なのかもしれない。
Google Earthで見るとこんな感じ。たぶんここでしょう。
Google Earthより
0 件のコメント:
コメントを投稿