2019年7月13日土曜日

東豊書店より最後の発掘品 (4) 『納西東巴文研究叢稿』/『彝族古代文化史』

お次は、

・喻遂生 (2003.9) 『納西東巴文研究叢稿』(西南師範大学漢語言文字學研究叢書). 1+2+370pp. 巴蜀書社, 成都.



雲南省麗江周辺に住む納西族の宗教・東巴教の経典で用いられる東巴文字についての研究書。

東巴教は、チベットの土着宗教ボン教の古い姿の流れをくむ宗教と考えられ、仏教の影響が色濃い今のボン教では失われてしまった伝承、教義、儀式を保存しているので、チベット研究にとっても重要な存在なのだ。

こういう本も何冊か持っているが、それらの補足として使うことになるだろう。

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・張福 (1999.2) 『彝族古代文化史』. 7+633pp. 雲南教育出版社, 昆明.



お次は四川~雲南の彝族。

彝族の祖先は、古代には烏蛮と呼ばれ、南詔王国(728~902)を建てた。これもチベット古代史ではジャン འཇང་ 'jang(「詔」のチベット語読み)と呼ばれ、重要な存在だ。

この本も、その南詔あたりから現代の彝族の文化についての研究書かと思ったら、さにあらず。それより前、春秋戦国~南北朝時代の彝族の先祖についてが中心の研究書だった。

先史時代から始まって、羌戎、濮、九隆、望苴子、蒲蛮、僰、嶲といった彝族の形成に関係があったとされる古代民族についての記述が続く。

その後は、現代の彝族宗教・神話より、古代の痕跡を探る。

そしていよいよ本論は、滇、爨(さん)についてだ。このまま烏蛮~南詔に行くのかと思いきや、なんと三国・南北朝の爨で終わり。これは意表を突かれた。隋唐より前の古代でおしまい、というまさに古代も古代だ。タイトルに偽りなし。

爨からは、東の烏蛮~彝族、西の白蛮~白族が分かれたとされており、重要な古代民族なのだ。

これはじっくり読むとかなり使いでがありそう。600ページ以上あるし。しかしこのページ数で、烏蛮も南詔も出てこないんだから、濃すぎる内容。

他の店ではどれくらいの売値なんだろう?と検索してみると、なんと日本にある中文書店のリストでは引っかかってこない。意外にレアものであることがわかった。国会図書館や大学図書館にはあるようだけど。

それにしてもこんな本がゴロゴロしていた東豊書店の貴重さがますます身にしみてきたよ・・・。

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