2015年7月15日水曜日

柱建て祭りとKumari(10) Kathmandu盆地のNaga神話

Kathmandu盆地は太古の昔には湖であった、という伝説が残っています。地質学的に見てもそれは間違いありません。

2015年4月26日日曜日Kathmandu盆地の地質と断層

を参照のこと。

が、それは数万年前の話で、その事実を人類が伝説として語り継いだとも思えません。おそらく盆地地形とその堆積物から推測したものでしょう。その名残である湖や沼などもそちこちに残っていますしね。

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Kathmandu盆地の場合は、湖の神話はすっかり仏教化されています。

Swayambhunath Stupa(स्वयम्भूनाथ स्तुप)あるいはSwayambhu Mahacaitya(स्वयम्भू महाचैत्य)の縁起文である

・Unknown(15-16C)『Swayambhu Purana स्वयम्भू पूराण』.

が伝える神話を見てみましょう。

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太古の昔、Kathmandu盆地はKalihradという湖であり、その湖を支配していたのは蛇神Nagaでした。複数のNagarajaがおり、Karkotaka(कर्कोटक)、Takshaka(तक्षक)、Kulika(कुलिक)が棲んでいたといいます。文殊菩薩(Manjushri मञ्जुश्री)がこの地を訪れ、その湖から光が放射されているのを見て、南の山を切り開いて排水。そして現れた光の丘が今のSwayambhunath(स्वयम्भूनाथ )です。

盆地が干上がるとNagaたちは住めないので、文殊菩薩が南に湖を作りそちらに移住した、ということになっています。

Swayambhunathの縁起はまだまだ続くのですが、ここではNagaの話題に集中するためここまで。

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現在のKathmandu盆地では、Naga信仰は大きな勢力ではありません。せいぜい病気予防・治癒を願う祭りNaga Panchamiで注目されるくらいですが、これはNagaの持つ属性の中でもごく一部に注目した祭りです。

Naga本来の属性は水・雨・豊穣を司ることです。これらをNagaに願う信仰は、そちらの湖周辺に残っており、古来の姿をとどめています。

次回はその姿を見ます。これがBisket Jatra、Rato Matyendra Jatra、Indra Jatra解明への大きなヒントになります。

参考:

・斎藤昭俊 (1984) 第四 インドの動物崇拝 四 蛇の崇拝. 『インドの民俗宗教』所収. pp.97-137. 吉川弘文館, 東京.
・Richard Josephson (after 1985) SWOYAMBHU HISTORICAL PICTORIAL. xv+63pp. Satya Ho, Kathmandu.
・Netra B Thapa (1990) A SHORT HISTORY OF NEPAL(The Fifth Edition). xi+187pp.Ratna Pustak Bhandar, Kathmandu.
・佐伯和彦 (2003) 『ネパール全史』(世界歴史叢書). 767pp. 明石書店, 東京.

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