さて、本題のKumariの番組です。
NHK特集 ヒマラヤ400キロ(全2回) (1)星と祭の伝説
1978夏(50分) NHK総合
カトマンドゥでのインドラ・ジャトラと少女神クマリ。ポカラからカリ・ガンダキへのキャラバン。途中タトパニで、旅館・スルジェ館を経営する平尾和雄氏も登場。
参考:
・NHK取材班 (1978) 『ヒマラヤ400キロ』. 日本放送出版協会, 東京.
・NHKアーカイブス
http://www.nhk.or.jp/archives/
ワールドナウ ネパール・シリーズ(全3回) (2)民衆の生き神様
1980初(30分) テレビ朝日
少女神クマリの話題と思われる。
参考:
・朝日新聞
地球トーク・神津善行 童女の生神様 ネパール
1986初(30分) 日本テレビ
ネパール・カトマンドゥ盆地に複数いる少女神クマリを取材。那谷(1987)と時期が近いが、何か関係あるかも。
参考:
・朝日新聞
素晴らしき地球の旅 植島啓司 少女神クマリとの出会い 聖地カトマンズ紀行
1995秋(90分) NHK-BS2
制作:ゼット
出演:植島啓司(宗教学者)。クマリとインドラ・ジャトラ。スワヤンブナートのネワール仏教、ボーダナートのチベット仏教もリポート。
参考:
・NHKアーカイブス
http://www.nhk.or.jp/archives/
・植島啓司 (2014) 『処女神 少女が神になるとき』. 集英社, 東京.
浪漫紀行・地球の贈り物 ネパール(全3回) (1)亜熱帯の森からヒマラヤへ
1995秋(30分) TBSテレビ
制作:ドキュメンタリージャパン
ネパール熱帯平原部からヒマラヤ高山まで垂直方向の変化をたどる。1回目はタライ平原チトワン、シワリク山地、カトマンズ、パタン。ローカル・クマリの一人であるパタン・クマリが登場。
神々の詩 神と呼ばれた少女
1999初(50分) TBSテレビ
制作:Zゼット
カトマンドゥのクマリとインドラ・ジャトラ。ボーダナートのチベット仏教。こちらも植島先生が絡んでいるよう。
参考:
・植島啓司 (2014) 『処女神 少女が神になるとき』. 集英社, 東京.
NHKスペシャル アジア古都物語 (4)女神と生きる天空の都 ネパール・カトマンズ
2002春(50分) NHK総合
カトマンドゥのヒンドゥ教、ネワール仏教。クマリ信仰をはじめ、カトマンドゥ盆地の宗教儀礼、祭礼がたっぷり紹介されている秀作。対象に接近した映像が多く、現場の匂いまで伝わってきそう。
DVD化:
・日本放送協会 (2003) 『NHKスペシャル アジア古都物語 第4集 カトマンズ 女神と生きる天空の都』(NHK DVD). NHKエンタープライズ, 東京.
参考:
・NHK「アジア古都物語」プロジェクト・編 (2002) 『NHKスペシャル アジア古都物語 カトマンズ 女神への祈り』. 日本放送出版協会, 東京.
・植島啓司 (2014) 『処女神 少女が神になるとき』. 集英社, 東京.
アジア人間街道 神様だった女 ネパール・カトマンズ
2002秋(25分) NHK総合
制作:NHK熊本
EX-クマリ(少女神クマリを退任した女性)たちのその後の生活を追う。地味な番組ながら名作です。
これ以降の番組情報は現在収集していないので、他サイトでお探し下さい。結構あったと思います。
最も興味深かったのは、最後の、アジア人間街道(2002)。
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・Wikipedia (English)> Kumari (Children)
http://en.wikipedia.org/wiki/Kumari_(children)
には記録に残っている1920年代以降の歴代Kumariが列記されています。
私がよくKathmanduに行っていた1990年代のKumariはAmita Shakyaさん(在位:1991-2001)でした。
Kumari在位中のAmitaさんのお姿は、
・VisitNepal.com > Nepal Information > Kumari Devi – The Living Goddess (as of 2014/11/01)
http://www.visitnepal.com/nepal_information/kumari.php
・Bas Grifioen / basgrifioen.nl > Travelling / Travelas to the middle nowhere > Nepal / Nepal : Scenes and View (Updated 10 January 2004)
http://www.basgriffioen.nl/eng/content/c52.htm
・Everest Base Camp : Trekking in Nepal > Kumari – the Living Goddess (Posted on July 31, 2014 by admin)
http://www.everestbasecamp.net/page/2/
あたりでご覧ください(注1)。
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たいへん目力の強い子で、神秘的でもあり、幼いながら女神の風格十分でした。
彼女はわずか2歳でKumariに選ばれ、10年間もの長きに渡りKumariを務めました。記録に残っている20世紀のKumariの中ではおそらく最長在位(注2)。
神々しさと可愛らしさを兼ね備えたこのKumariは、当時大変な人気でした。KathmanduでKumariの話題になると、地元の人はみな口をそろえて「かわいい、かわいい」と連発。私もすっかりファンになりました。
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このAmita Kumariは2001年に退位。
で、先ほどの「アジア人間街道」にこのAmitaさんが登場するのです。これが2002年ですから、退位の翌年になります。
自宅に戻ったAmitaさんですが、長年務めた女神気分が1年位で抜けるはずもなく、母親が家事を頼んでも「なんで私がやるの?」とばかりに立ち上がりもしない。それで母親がいちいち手取り足取り教えながら家事を一から教える、という状態。
2歳からずっと女神様として崇められてきたのだから、それも仕方ないですね。おまけにどうやらAmitaさんは引っ込み思案な性格に育ってしまったようで、お母さんは将来を心配していました。
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と、ここまでがTVでの内容。その後のAmitaさんの情報は知らなかったのですが、調べてみるとこんな記事が。
・The Telegraph > News > Picture Galleries > World News > Living goddesses: girls take part in the Kumari Puja festival in Kathmandu, Nepal(21 Sept 2010) > Image 6 of 17
http://www.telegraph.co.uk/news/picturegalleries/worldnews/8016022/Living-goddesses-girls-take-part-in-the-Kumari-Puja-festival-in-Kathmandu-Nepal.html?image=5
たいへん美しいお嬢さんに成長されています。
Ex-Kumariには、「結婚しても夫が早逝、幸せになれない」などの噂があります。Majupuria & Robert(1993)は、Ex-Kumariについても調べてあり、実際はこの話は噂に過ぎないことが判明しています。
Amitaさんは是非幸せになってほしいものです。
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引っ込み思案なAmitaさんと対照的なのが、その先代のKumariだったRashmila Shakyaさん。Rashmilaさんの在位は1984~1991年。
Rashmilaさんは「アジア人間街道」にも井田(2014)にも登場しています。新聞記事やウェブ上の記事でもよく見かけます。メディアに積極的に登場し、自分の経験や意見をしっかり伝えることのできる方。Ex-Kumariの中では最も有名な方でしょう。
Rashmilaさんは大学にも進み、IT技術者として活躍中、というEx-Kumariでは異色の存在です。
自伝も発表しています。
・Rashmila Shakya & Scott Berry (2005) FROM GODDESS TO MORTAL : THE TRUE LIFE STORY OF A ROYAL KUMARI. Vajra Publications, Kathmandu. (未見)
またKathmanduに行く機会があったら買おう、と思ってはいるのですが、行く機会はずっとないまま。もちろんAmazonなど通販で買うことも可能なのだけど。
もう少し続きます。
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(注1)
Kumariを描いた絵として、素晴らしいのが日本画家・後藤仁先生の作品。
「クマリ -The Living Goddess-(ネパール)」 F50号 (2010年制作)
「デオ・マイジュ〔小さな女神〕(ネパール)」 F12号 (2010年制作)
・後藤仁/後藤 仁(GOTO JIN)のアトリエ 日本画家・絵本画家 後藤 仁 公式ホームページ > 後藤 仁 作品集 > 日本画 作品 (大学から現在までの日本画代表作品) (as of 2014/12/07)
http://gotojin.web.fc2.com/work2.html
でご覧ください。
見たところ、この絵のモデルもどうもAmita Kumariのような気がします。Amitaさんの特徴(特に目力)がよく出ていますね。美しい作品です。
(注2)
Majupuria & Roberts (1993)は、Ex-Kumariの退位後の人生についての、初めての詳しい報告と思われます。
歴代Kumari在位表もここで初めて作られたようです。そこでは、20世紀前半のChin Shobha Kumariが在位14年で最長とされています。
その後の調査でこの表はアップデートされており、在位年はかなり修正されています。現在はWikipediaに掲載されている表(出典はThe Kathmandu Post)がより信頼性の高い表と思われます。
そこでは、先程のChin Shobha Kumari(Chini Shova Shakya)の在位は8年。最長在位ではなくなります。そして、この表で最長在位に上がってくるのがAmita Kumari(在位10年)というわけです。
拙作日本画をご紹介いただき誠に有難うございます。私も作品を描くに当たって、随分クマリの事を調べましたし、実際、ネパールへクマリの取材におもむきました。
返信削除ちなみに、作品のモデルは、Matina shakyaを2009年に取材したものと、先代クマリPreeti shakyaのイメージを合わせて描いています。Matina shakyaを取材した時には、彼女の2m位まで近づき、目もはっきりと合いました。
日本画家・絵本画家 後藤 仁
追記。クマリは普遍的な存在ですので、おっしゃる様に、Amita Kumariをはじめとする歴代クマリのイメージも作品に反映されています。私も「アジア古都物語」「アジア人間街道」等の幾つかのテレビ番組も拝見し、とても魅了されました。
返信削除日本画家・絵本画家 後藤 仁
私はAmita Kumariに親しみがあるので、どうしても贔屓目に見てしまいますね。どのKumariも本当に魅力的な方ばかりです。
返信削除以前は、退位するまではKumariの本名は秘密とされていたのですが、最近はすぐに出てくるようになりました。こんなところにも民主化の影響があるのでしょうかね。
いずれまたKumai画の新作も期待しております。ありがとうございました。